やまびこ観測所

世の中で起こっていることを観測して記事にしていきます。

ハマスホイとデンマーク絵画(東京都美術館)

上野の東京都美術館にて、 2020年3月26日まで。
日曜の午前中に行ったせいか、外出控えか、思ったより混雑していなかった。
じっくりと、それぞれの作品に向き合うことができたように思う。


構成は以下。
1. 日常礼賛─ デンマーク絵画の黄金期  In Praise of Everyday Life̶The Golden Age of Danish Painting
2. スケーイン派と北欧の光  Light, Landscape and the Artistic Life of Skagen
3. 19世紀末のデンマーク絵画─ 国際化と室内画の隆盛  Turn of the Century̶Diversity and the Rise of Painting Interiors
4. ヴィルヘルム・ハマスホイ─ 首都の静寂の中で  Vilhelm Hammershøi ̶ In the Urban Solitude and Silence

章ごとに壁の色が異なっていた。
1.ではアクアブルーというのか、ティファニーの包装紙のような色。
2.はライトブルー、黄色みの少ない、冷たい色。
3.は桃色。待ち焦がれた春のイメージ。
4.は白。アイボリーにもライトグレーにも思えた。
額装の金色が映える、個々の作品の背景としては勿論、空間として美しいなぁと思った。
もはやこの展示に住みたい、と思うレベル……!

ハマスホイとデンマーク絵画、とのタイトルだが、構成としてはデンマーク絵画の大枠を示してから。
デンマークの系譜にありつつ、異質である作風が際だつ。

以下、章毎に気になった作品のメモ。すごく長くなってしまった……


1. 日常礼賛─ デンマーク絵画の黄金期 no. 2「ランゲリニェと軍港を望むカステレズの風景」クレステン・クプゲ
雲の描写が印象的。

no. 8 「果物籠を持つ少女」コンスタンティーン ・ ハンスン
no. 9 「外科医クレスチャン・フェンガとその家族」マーティーヌス・ラアビュー 王侯貴族でなく、市民の肖像画が描かれる時代(もちろんそれなりに裕福な人々のものなのだろうが)。
外科医の家族には、ワンコとオウムも含まれるような。
「抑制の効いた表現」という説明。大陸の華美さでなく、シンプルさ。素朴というより、「素」

no. 11 「海岸通りと入り江の風景、静かな夏の午後」クレステン・クプゲ
海と空がつながる色合いが美しい。北欧の油絵の具は、他の土地のものと異なるのでは……?とまで思ってしまう。

no. 12 「シュレースヴィヒを彼方に望むアセンスの風景」ダンクヴァト・ドライア

no. 13「フレズレクスボー城の棟─ 湖と町、森を望む風景」クレステン・クプゲ
構図が印象的。風景をメインにしながら、画面の下部に屋根を黒く写り込ませている。
アクセントになっていて、メリハリが効いている。

no. 14「ブランスー島のドルメン」ダンクヴァト・ドライア
ドルメンとは「巨石墳墓」らしい。併記されているタイトルは”Stone Circle on the Island Brandsø with a View towards Gronninghoved and Anslet Forest”.

広い画面に、奥行き深く描かれている。巨石がまず目を惹くが、遠景の人々、手前の草花の細かな描写も美しい。

no. 15 「シェラン島、ロズスコウの小作地」ヨハン・トマス・ロンビュー
ナショナル・ロマン主義、愛国的な雰囲気。
牧場に牛とツバメ、ポピーなどの花々。郷愁とナショナリズム

no. 16「ティスヴィレの森から望むフレズレクスヴェアクの風景」ピーダ・クレスチャン・ スコウゴー ちょっとおどろおどろしい雰囲気。雲の色合いに不穏な予感
2. スケーイン派と北欧の光

no. 18「海辺の網干し場」ヴィゴ・ヨハンスン これまた少々、不気味な雰囲気。灰色の空

no. 22 「漁網を繕うクリストファ」ピーザ・スィヴェリーン・ クロイア
もう一作、女性が繕い物をする作品と合わせて、「つくろいもの」とは何だか尊い仕事だなと思った。
物を修繕しながら使う暮らしへの憧憬。
ボタンの付け直しすら億劫に思ってしまう自分とは、、、 漁師のモチーフにキリスト教っぽさを覚えてしまうのは、妄想が行き過ぎだろうか。

no. 23「スケーインの海に漕ぎ出すボート」
大画面、躍動感。油絵ならではの絵の具の盛り上がりが良い。
水際に埋まる石、砂の上の水の光、波しぶきの描写に見入ってしまった。
裸足の漁師さん、足が寒そう。

no. 28 「スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち」ミケール・アンガ
三途の川の端の風景か、と思うくらいの美しさ懐かしさ。
見ていると引き込まれそう。

no. 31「スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガと マリーイ・クロイア」ピーザ・スィヴェリーン・ クロイア
ペールブルーの世界、画家の妻達が2人連れだって歩いて行く……。
3. 19世紀末のデンマーク絵画─ 国際化と室内画の隆盛
no. 33「花咲く桃の木、アルル」クレスチャン・モアイェ= ピーダスン
北欧画家、南仏にてゴッホと出会うの巻。

no. 35「夜の波止場、ホールン」ヨハン・ローゼ
アクリル絵の具みたいな、パッキリした色合い。

no. 36「夕暮れ」ユーリウス・ポウルスン
すごく良い。なんだか日本画にもありそうなグラデーション、沈む太陽の光にぼんわり照らされる木のシルエット。絵はがきでもあれば欲しかったのだが……

no. 42「遅めの朝食、新聞を読む画家の妻」ラウリツ・アナスン・レング
おしゃれで居心地良さそうな調度品。画面の中に入りたい。

no. 43「アンズダケの下拵えをする若い女性」ピーダ・イルステズ
きのこの鮮やかな橙色が画面の中で印象的。石突きをナイフで切り落としている。
ナイフは左手に持っているけど、きのこだとそういうものなのかしら(利き手と反対?)。

no. 47 「読書する少女のいる室内」カール・ホルスーウ
いすの背もたれが楕円形をしているのが印象的。 室内画の風潮を描いた後に、いよいよハマスホイの作品へ
4. ヴィルヘルム・ハマスホイ─ 首都の静寂の中で

no. 52 「夏の夜、ティスヴィレ」
何だか不安な感じの印象。だけど見入ってしまう。
自分の心の深淵をのぞき込むような不穏さ。

no. 62「チェロ奏者、ヘンリュ・ブラムスンの肖像」
制限された色使い。背景は下に行くほど暗く、足は暗がりに溶け込むよう。

no. 64「室内、ラーベクス・アリ」
ピンクの壁紙と灰色の風景。

no. 66「農場の家屋、レスネス」
工場みたいな無機質さ……

no. 69 「若いブナの森、フレズレクスヴェアク」
グレーと緑の風景。生命力も感じる。

・「明るく生活感のある」の逆の画面。誰も居ない古い部屋の美しさ。人々の痕跡は薄い。
・画家の妻の装い、黒いワンピースと白いうなじ。
・作品のあらわすもの。静謐さのなかに、不気味さを感じてしまうのはなぜか?


興味深い展覧会だったのだけど、まだまだ理解不足な気がする。
北欧デンマークハマスホイ、継続調査!