やまびこ観測所

世の中で起こっていることを観測して記事にしていきます。

コロナ禍なのかコロナ下なのか、この中なのか

変動する環境にいちはやく適応してゆける能力を持っていることが、「優れている」面があるといえる。

どうやって適応するのか。

「新しい概念」を提示し、共有することによって。

どうやって提示し、共有するのか。

「概念を示すことば」を創造することによって。

 

新造されたことば、あるいは新しい語義を付与されたことばによって、これまでなかったことを示せるようになる。

たとえば、病気の名前を付けるように。

これまで名前のなかった症状、患者の集団に名付けをし、一括りに捉えられれば、疾患の理解も進むことだろう。

 

COVID-19と名付けられた感染症と、それに伴う数多の変化。

これまでなかった言葉、なかった習慣が新しく生まれ育ってきている。

 

「コロナ禍」

新型コロナウイルス感染拡大による影響”

あるいは“新型コロナウイルス パンデミック

 

この言葉の耳慣れなさがずっと気になっていた。

コロナ禍なのか、コロナ下なのか、この中なのか。

どうやら、ペストやコレラなど、過去に人類に甚大な影響を及ぼした感染症について、ペスト禍、コレラ禍、などという言葉があったらしい。

これに当てはめて、コロナ禍。

 

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少し、翻訳記事をさらってみた。

 

1) ロイターの記事。

「独、今年の成長率予想を上方修正 コロナ禍想定ほど深刻化せず」

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-germany-economy-idJPKBN25S5AL

[ベルリン 1日 ロイター] - ドイツ政府は1日、新型コロナウイルス感染拡大による影響は当初懸念されていたほど深刻化しないとの見方を示し、2020年のドイツ経済の成長率見通しを上方修正した。ただ、21年については下方修正した。

 

 

元記事はこちら。

'Germany sees economy recovering faster than expected in 2020'

https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-germany-economy/germany-sees-economy-recovering-faster-than-expected-in-2020-idUSKBN25S4AY

BERLIN (Reuters) - Germany expects the economic devastation caused by the COVID-19 pandemic to be less severe this year than originally feared, but sluggish foreign demand is likely to weaken the rebound in Europe’s largest economy next year.

 

2) ニューズウィークの記事。

「コロナ禍なのにではなく、コロナ禍だからBlack Lives Matter運動は広がった」

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/black-lives-matter_1.php

 

元記事はこちら。

"How the pandemic changed social media and George Floyd’s death created a collective conscience"

https://theconversation.com/how-the-pandemic-changed-social-media-and-george-floyds-death-created-a-collective-conscience-140104

 

 

n=2なのであくまで印象、推測になるが、ヘッドラインでは「文字数が少ない」「目を引かせる」ために「コロナ禍」という単語を使用していて、記事本文ではパンデミック=感染拡大、あるいはその影響、というような内容に書き下しているように思えた。

「コロナ禍」という文字は、「呪われた世界にある」ことを私たちに意識させているように思えてならない。

 

禍、という言葉は文字通りに禍々しい。

そして、神の部首がついており、人間にはどうしようもない、”天災”という感覚。

「咼」には、けずられ、ゆがむこと、あるいは渦、あな、の意があるらしい。

仲間の漢字には、蝸、渦、窩、など。

 

なんとなく、「禍い=disaster」かと思っていたが、“COVID-19 disaster”というより、”コロナ禍”のほうがそれらしい。

検索してみると、

“COVID-19 disaster” 約 1,800,000 件

”コロナ禍”      約 90,200,000 件

ほらね。

 

と、ここまで禍、禍、と漢字にこだわってきたが、「コロナ禍」が気になるのは、やはり音の問題なのだろう。

ニュースの中で、その前に文章があって、「コロナ禍で〜」と言われると、「この中で」と頭の中で変換されてしまう。

上に、翻訳記事について書いたが、「コロナ禍」は音ではなく文字向きのことばであると思った。「か」で「禍」に変換できるほど、不幸な生活は送っていないのだ。

「禍福はあざなえる縄のごとし」とか、定型フレーズじゃないと、なかなか難しい。

 

最近使われ出した言葉を、耳で聞いて、漢字変換できないというだけの感想を長々と綴ってしまった。

考えすぎると陰謀論めくが、新しく使われ出した言葉というのは時代をあらわす便利な言葉だけど、その言葉の持つ印象に時代や、人の心が引きずられる部分があると思う。

 

アーケードの天井

渦っぽい写真

 

ついでに調べて、関連は低いのだけど気になったこと。

黄禍論の黄禍は、yellow 'peril' 

岡倉天心が反論に使った「白禍」はwhite disaster.

perilの「差し迫った危機」的な意味でなく、「災厄」っぽさを論じようとしているのか。

言語はどこまでも興味深いな。