やまびこ観測所

世の中で起こっていることを観測して記事にしていきます。

円山応挙から近代京都画壇へ(2019年9月29日まで、上野にて)

東京藝術大学の美術館にて、2019年9月29日まで。

その後、京都近代美術館にて、11月2日から12月15日まで。

https://okyokindai2019.exhibit.jp

 

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江戸から明治へ。「日本画」が確立していった過程を、「四条派」の画家達の作品で追っていける。
訪れたのは会期の末。前期と後期でかなり大幅な掛け替えがあったようで、前期を見られなかったのが悔やまれる。

冒頭、円山応挙の「写生図鑑」。
こういう絵図が本当に好きなのだ。植物、動物を見たままに描いている。
訪れた時に展示されていたのは甲巻で、きのこや山菜にシダ、木の葉や花、ウサギや鴨を見られた。
描き込みがとてもとても細密で、目をどれくらい見張っても足りないくらい。
竹の葉の端が少し枯れている様子も写実的で、いかにもありそうな風景に見える。
竹に雀の図なら、すべて青々とした葉で描きそうなモノなので、これは本当に「絵のための材料」としての写生なのだろう。
鴨の羽の模様なども執拗なまでに鮮明。白兎とと同じ画面にいるこまねずみが愛らしい。
ペース配分など考えずに、じっくりと鑑賞。そして、図録は買わねばならぬ、と決意。
(しかし、図録ではこの写生図鑑はかなり小さく……。また機会があれば見にゆきたいもの)

 

竹内栖鳳「雨霽(あまばれ)」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/98240/7
右隻、一羽飛んでいくゴイサギ。たくましさと孤独に憧れる。
左隻、雨宿りの群れが寄り添っていてかわいらしい感じ。

 

大乗寺の襖絵。宇宙と思想。

 

呉春「群山露頭図」
飛ぶ鳥の目線で、山々を上から見ている構図。なるほど大らかな印象。
襖絵は、ついついしゃがんで見たくなり、相撲取りのように蹲踞。

 

国井応文、望月玉泉「花卉鳥獣図巻」
冒頭の図鑑よりも時代の下った雰囲気。カナリヤや羅紗緬など、日本固有でない生き物たちも。
北原白秋がモチーフにするような、妖しげな雰囲気も想像してしまう。
野菊の可憐な色。ちょっとずるそうなキツネ。ビアトリクス・ポターの「きつねどん(Mr. Tod)」のよう。

 

森川曽文「柏鹿伴鹿児ノ図」かしわにしかのこをともなうしかのず
回文か呪文のようだけど……。鹿の家族。円を描くような構図で絆を表現、との説明。
なんとなく、明治時代の家族のあり方なんかを勘ぐってしまう。
ともあれ鹿はかわいらしい。

 

木島櫻谷「しぐれ」https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/26587
こちらも鹿の図。秋草に鹿。毛の描写がこまやか、というよりほんわか。
実際に野に暮らしている鹿よりもやわらかな印象。
鹿の顔つきがなんとも愛おしい。

 

幸野楳嶺「海魚図」水の中の表現が面白い。

 

森寛斎ほか「魚介尽くし」これ好きなやつ……。
いろいろな魚や貝、イカカニのたぐいまで。
迫力のあるタイやエイ。小さく描いてあるモズクガニとか、シジミなども良い感じ。

 

川や滝の図。水音が聞こえてきそうな錯覚。

 

望月玉泉「池畔驟雨図」雨の表現、鷺、水辺に生える草。

 

最後、仙人や美人の図。
集中力を使い果たしてなんとなく見る。

 

動物や植物に注ぐまなざし。
自然の中にいる生き物の動きに重ねる思い。
地形や気象の観察。

 

目に優しく、心なごむ絵。

でも、通り過ぎるだけでなく、見る人の心をどこか動かす。

 

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没入しすぎたせいか、展示室を出たら時差ぼけみたいな感覚。