2019年夏ドラマ振り返り:監察医 朝顔
映画のようなドラマシリーズだった。しみじみ見ていた。
前半はわりと1話毎に区切りがありつつ、朝顔先生(万木朝顔:上野樹里)とお父さん(万木平:時任三郎)の過去の描写が深められていく。そして、桑原くん(桑原真也:風間俊介)との関係も進行していき、新しい家族が出来上がっていく。後半、娘のつぐみ(桑原つぐみ:加藤柚凪)が生まれ、慌ただしい生活とさらなる事件。
万木家のシーンがよかった。あの一軒家、本当に朝顔が生まれ育っていそうな。
当初、東日本大震災の記憶を背負った親子二人がなんだか痛々しく、見ていて辛いように感じていた。だけど、ちゃんとごはんを作って食べて生活している様子が描かれていて、'Life Goes on'の感覚を得た。桑原くんが来て、つぐみが生まれて成長していく中で、家族の囲む食卓がにぎやかになっていくのも嬉しい気持ちがした。最終話の、発表会のためにリスの扮装をしているつぐみちゃん、愛らしすぎです……!
解剖学教室の面々。茶子先生(夏目茶子:山口智子)の自由人な感じは時期的に「なつぞら」ともなんとなく重ねて見てしまい、そのうちオデンでも振る舞い始めるのでは、と思ったりしていたが、困ったときには頼って良い人がボスってのはいいなぁと思った。前半は医学生の"みっちゃん"だった光子先生(安岡光子:志田未来)の成長も良い感じ。元子役の志田未来ちゃん、と思っていたが、調べたらもう26歳……!「女王の教室」や「14歳の母」の印象が強かったが、、、今後の活躍も楽しみ。
法医&法歯学者の藤堂夫婦(板尾創路、平岩紙)に検査技師の高橋くん(高橋良介:中尾明慶)、後半から登場の医学生熊田(熊田祥太: 田川隼嗣)。最終話、モップを持って突っ立ってしまった熊田に藤堂が言う「ロックスターかよ!」っていう突っ込みが何だかツボだった。
居室内に掛けられていた、島津製作所のカレンダーが印象的。あの2か月分見られて視認性があるのと、ちょうど良いサイズ感がいいんだよ……!と心のなかで頷いていた。
警察関係者も、また良い感じの役で。警察サイドを主眼にしたスピンオフとか、見てみたいと思った。山倉係長(山倉伸彦:戸次重幸)は万年係長にしちゃカッコよすぎな気もしたが……(天陽くんのお父さんだから仕方ない)。アクの強めな検視官丸屋(丸屋大作:杉本哲太)も最終回で一致団結!なのは、ベタと思いつつ胸が熱くなる展開。桑原くんの異動後、お父さん(万木平)とペアを組んでいる愛川刑事(愛川江梨花:坂ノ上茜)、何だか印象に残る人であった。
ヒロインの朝顔がスゴい!だけの描写でないのも良かったかな。人一倍思いやりが強くて、相手に共感しようとするのが魅力的。そして、桑原くんをたまにバサッと切り捨てるさばけた感じも素敵。でも、終盤の事件では感情的になってしまって茶子先生に諫められるシーンもあり。上野樹里の眼力の強さ、姿勢の良さ。
衣装も素敵だったなぁ。
と、ここでダイワハウスのCMを思い出し、相手役のヘタレさんはだれだったっけ、と検索してみたら中村倫也……!ゴン、お前だったのか……。「凪のお暇」の感想もいずれまとめておく。
最終話、「仙ノ浦」駅で朝顔が歩き出せてよかった雰囲気で収束すると思いきや、里子(万木里子:石田ひかり)の生家でじいちゃん(嶋田浩之:柄本明)が幻影を見てしまい、「何で里子はここにいないんじゃ……!」と慟哭。何年経とうが、近しい人を突然失った痛みは、癒えているようで癒えていない。それでも自分は生きていくしかない。
人の死に向き合う仕事。死因を解明するため、対象に真摯に向き合う姿勢。
自分の力ではどうしようもないことに遭遇し、身を裂かれるほどの苦痛を経験しつつ、何とか生きていく。
明日放送予定の特別編も、とても楽しみ。
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死因といえば、この本を読んでいないのを思い出した。
死因解明、解剖、監察医、ということであれば、チェックしておきたいところ。
『死因不明社会』(海堂 尊):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部